2016年3月まで発刊をしていた人気季刊誌『銀座十字屋タイムス(旧・銀座十字屋通信)』で人気のあった連載「ハープ解体新書」をお届けいたします。
ハープ解体新書Vol.5 「ハープって高価?」
今回は古いお話をさせていただきます。とは申しましても、古代エジプトやギリシャの時代ではありません。今からちょうど半世紀前の1950年から60年代のことです。
当時の日本は戦後の復興期。社会全体が西欧との遅れや格差を取り戻そうと、算数や社会科などの学問に力を注ぎ、音楽や美術などの芸術に対する教育は、やっと器材などが整ってきたかな、という時代でした。
その頃、私は小学生。どこにでもいたイタズラ盛りの子どもでした。2年生までは音楽の授業も音楽室ではなく、いつもの教室で受けており、担任の先生が弾くオルガンに合わせて歌を習っていました。憧れの音楽室での授業は3年生から。黒いグランドピアノが偉そうに、かなりの場所をとって置かれていた音楽室を、ドアの隙間からよく覗いたものです。
その後、3年生になり、ようやく憧れの音楽室に一歩足を踏み入れると、そこは想像以上に広く、可動式の黒板や器材に感動したのを今でも鮮明に覚えています。後ろを振り返れば、壁には偉そうな人の肖像画がズラーっと並べて飾られているではありませんか!バッハ、モーツァルト、滝廉太郎… 今でも画を見れば、それが誰だか即座に言い当てることができますよ。
さて、その音楽室でのこと。
ある日、音楽のゴトー先生が、
「オルガン4台で竪型ピアノが1台買えます…」
「竪型ピアノ4台で、グランドピアノが1台買えます…」
さらに、
「グランドピアノ4台でハープが1台…!!」
と、ハープがいかに高級品であるかを説明して、みんなを驚かすのです。
当時、日本にあるハープはすべて輸入品で、時代も物価も異なるので単純に比較はできませんが、果たしてそんなに高かったのかな?その頃、我が家に届いたオルガンは2万円ぐらいと聞いていたし…。
その後、十字屋に入社して間もなくして出会った、ある著名なハーピストは、
“都内に一戸建てを買うか”
“ハープを買うか”
迷った挙句、少し無理をしてハープを買いましたとおっしゃってたし…。いずれにせよ、今では考えられない価格であったことは間違いありませんね。
そう思うと、十字屋でハープに出合って約40年の間に、いろんなことがありましたが、ここ最近、ハープが随分と普及し、手に入れやすい価格になったと実感しています。
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