2016年3月まで発刊をしていた人気季刊誌『銀座十字屋タイムス(旧・銀座十字屋通信)』で人気のあった連載「ハープ解体新書」をお届けいたします。
ハープ解体新書Vol.4 「弦の長さは、どうして違う?」
シリーズ4回目のテーマは「弦の長さは、どうして違う? 」です。
ハープの弦は少なくても22本、多いもので47本もあり、その1本1本の長さはすべて違います。ヴァイオリンは4本の弦を持っていますが、長さはすべて同じ。ギターやコントラバスなども複数の弦を持っていますが長さはどれも一緒ですね。では、ハープをヴァイオリンやギターのように同じ長さの弦で作ろうとすると、どうなるのでしょうか?今回はハープの弦について、ちょっと探ってみようかと思います。
図Aの○印の弦の中央を「ド」と仮定します。もし、ここで同じ材質で同じ長さ、同じ太さの弦を張ると「ド」から右へ行くほど弦の張りをできるだけ強くしなければ高い音が出ません。逆に、「左」へ進めば進むほど張りを緩めることになります。つまり、高い音ほど弦が切れやすくなり、低い音ほど弦楽器に必要な最低限の張りが足らず、音が小さすぎて響きもなく、結局楽器として成り立たなくなるのです。
ハープの場合、弦の”張り”を変えるのではなく”長さ”を変化させるほうが効率的に音を生み出せるのです。とはいっても、弦を限りなく長くするわけにはいきませんね。
実際、○印の「ド」より1オクターブ低い音を生み出すためには、「ド」の弦の2倍もの長さが必要になるのです。(図B)また、長い弦を弾くと振幅が大きくなり、左右の弦に当たったり、半音装置にぶつかって雑音の塊になります。この現象を防ごうと、弦と弦の間隔を広げると、今度は音域によって弦の間隔が違う楽器になり、ハープとして演奏できなくなります。
これらの問題を解決する方法として考え出されたのが「巻き線」です。巻き線だと、低音を出す弦の長さを短くすることができ、さらに張りもちょうどいい具合に保てるのです。そしてハープ独特の音色を作るために弦の素材にも着目。ガット(羊の腸)を使っているから、あの優美でやわらかい音色が生まれるのですよ。ハープは弦の素材ひとつとっても奥が深いですね。
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